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6.内容等

本シンポジウムは、オゾン層破壊の原因物質である塩素系フロンの全廃を控えて、冷媒代替化のためのトライボロジー技術の現状を見つめ直し、今後の方向を探ることを目的に開催された。

午前の部では最近ようやく決まってきたHCFC代替用冷媒の紹介があった。これら冷媒の将来の懸案として冷媒圧力の上昇に伴う長期寿命と、HFCの地球温暖化係数が二酸化炭素より大きいことから、HFC系代替冷媒も規制される可能性について言及があった。

続いて、トライボロジカルな問題が多発した原因とそれにより生じる問題が従来の潤滑問題やCFC冷媒と対比して概観された。また、それらを解決するために行われた研究でわかったこと、及び依然として未解明な点のうち、今後解明すべき基礎的現象と長期寿命を保証するために開発すべき技術について提言がなされた。

続く2つの講演では、各々冷媒の潤滑に及ぼす物理的効果と化学的効果について、主に基礎的現象論の立場から最近の研究成果を基に詳細な解説が行われた。

午後の部では対策技術の柱である潤滑油、摺動用材料及び設計技術の現状について講演があった。

先ず潤滑油に関して、冷凍機内における潤滑油の役割と要求される諸性能並びに開発指針が示され、これらの観点から現在使用中の油剤や今後使用されるであろう油剤の得失について解説がなされた。材料に関しては、冷媒圧力の高圧化に伴う摩耗・焼付きの増加に対し、金属材料の微細組織や表面処理及びコーティングによる対応の例が紹介された。そして長期的寿命を保証するための評価手法開発の必要性が指摘された。

設計に関しては、複雑なシステムである冷凍システムが、実際にどのように機能しているかを実機において測定する手法とその実測例が紹介され、また、各モニタリング手法の得失について解説がなされた。そして、潤滑の最も厳しいローリングピストン型の圧縮機では、混合潤滑状態になっていることが示された。これらの知見を設計に生かし、対策を講じるためには、冷媒の存在下での混合潤滑のモデルを構築し、それを実機の摺動部のモデルに適用する必要があることにより、最近開発された混合潤滑モデルと、それによる計算例が示され、その結果は冷媒の存在下での極めて複雑な実機の挙動とよい相関があることが述べられた。そして、解析モデルの精度向上には薄膜の物性等各種データ類を集める必要性が指摘された。設計解析の具体例として、薄くなった油膜や潤滑不良に対応するための、実機の軸受モデル構築例と、それを用いて行った軸受部肉厚低減によるソフトEHL実現に有効な設計パラメータ探索の例が紹介された。

総合討論においては、今後の研究開発の目指すべきもの、長期寿命をいかに保証するか、そして、討論の場で紹介された潤滑の問題の発生しにくい新型圧縮機などに関する討論が活発に行われた。

 

 

 

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